CARIBIC (Civil Aircraft for the Regular
Investigation of the atmosphere
Based on an Instrument Container)
 
民間航空機を利用した定期大気観測)は大気組成の詳細なデータを得る非常に有効なシステムです。ヨーロッパ6カ国の11の著名な大気科学研究所が協力して全ての温暖化ガス、多くの反応性ガス、エアロゾル粒子などの測定を行っています。
ルフトハンザの新型エアバスA340-600長距離旅客機に観測機器が搭載されています。これによりCARIBICでは、サンパウロからサンディエゴへの航路上などの遠く離れた地点でのデータを得ることができます。毎月フランクフルトから飛び立った旅客機は、大気科学的に非常に興味深い地域を観測しています。つまり通常のフライトの間に大気観測もしているのです!
空気とエアロゾル粒子の取り込み口はハイテクを駆使したものです。微量大気ガスと粒子の測定は濃度が低いため難しい上、システムは安定し動作し、空気力学的にも正しくなければなりません。そのため科学的・航空学的知識を結集して設計と作成を行いました。取り込み口の上に見える部分は航空機の中に設置されています。
設置: 航空機の中に配管を設置し、外気を科学測定器へと導入します。12日間のCARIBICシステムの設置作業のあと、テスト飛行を行いました。A340-600 旅客機へのインターネット(LH FlyNet)とワイヤレスLANシステムの設置作業工事期間をうまく利用したので、CARIBICの設置作業のためにだけ旅客機を地上に止めておく必要はありませんでした。
約250m/sの速度での飛行中でも、空気取り込みシステムは正常に動作しなければなりません。粒子をこの高速度中で測定することは非常に難しい問題でした。大気取り込み口は3個の空気力学的部品を含む計4個の吸入口から構成されています。また、3個のミニチュア望遠鏡は太陽光スペクトルの測定をおこなっており、同時にビデオカメラにより雲の測定もしています。測定が終わった空気は排気口を通して排出されます。
全ての科学計測機器は幅3.2mのコンテナに収められています(1500kg)。15 の測定装置は全てメインコンピューターで制御され、連続的に空気と粒子を分析しています。それ以外に実験室での分析のために28 個の大気サンプルが採取されます。このコンテナは何年もの研究の上、高度な技術を用いて開発されました。現在、このコンテナは毎月2回のフライトで世界中を飛び回っています。
どうしてCARIBIC が必要なのか?
地球大気の組成変化は気候変動をもたらします。大気はとても巨大で複雑な反応容器と考えることが出来ます。ダストのような粒子だけでなく、大量の汚染ガス(天然ガス、海から放出されるガスなどもあります)が毎年大気に放出されています。大気に放出されたガスは輸送、混合を経ていくつもの化学反応が起こります。その結果新たに粒子が作られることもあり、その粒子は雲の形成過程に作用し、直接地球の放射バランスに影響します。幸運にも、大気には汚染されるばかりでなく、太陽の紫外線により浄化されるというプロセスもあります。このように大気は非常に複雑な汚染と浄化作用のバランスの上に成り立っています。したがって、これらのプロセスを正確に理解するために観測が必要とされています。そのためには地球全体を網羅し、詳細かつ、季節を通じた何年にもわたる昼夜両方のデータが必要なのです。CARIBIC は旅客機を利用してこのようなデータを得られる実にユニークなシステムであり、大気の実態の解明の強力な手助けになります。
CARIBIC の主な研究者:

Prof. Dr. Dr. hc. mult. Paul Crutzen, MPI Mainz - Science adviser
Prof. Dr. Jos Lelieveld, MPI Mainz - The oxidative capacity of the atmosphere
Prof. Dr. Andreas Macke and Dr. Markus Hermann, TROPOS Leipzig - Aerosol distributions
Prof. Dr. Johannes Orphal and Dr. Andreas Zahn, IMK FZ Karlsruhe - Water vapor and ozone climatologies, short lived reactive gases
Prof. Dr. Markus Rapp and Dr. Hans Schlager, Dr. Helmut Ziereis, DLR Oberpfaffenhofen - Nitrogen oxide budget and aircraft emissions
Prof. Dr. Ulrich Platt, Dr. Lara Penth, University of Heidelberg - Optical measurements, remote sensing
Dr. David Oram, University of East Anglia, Norwich - Halocarbon research
Prof. Dr. Bengt Martinsson, University of Lund - Aerosol properties
Prof. Dr. Markus Leuenberger, University of Bern ultra precise oxygen measurments
Dr. Ralf Ebinghaus, GKSS Geesthacht - Atmospheric mercury cycle
Dr. Philippe Ciais, LSCE-CEA, Paris - Carbon dioxide cycle
Dr. Peter van Velthoven, KNMI, the Netherlands - Meteorology
Dr. Jonathan Williams, MPI Mainz - Hydrocarbon chemistry
ルフトハンザの航空エンジニアと大気科学者の協力により、地球大気を綿密に知ることができるこの新しいプラットホームは生み出されました。この両者のすばらしい協力により、CARIBIC は変わり行く大気を見守り続けることができるのです。
2004年12 月にドイツの環境大臣 Trittin 氏はCARIBIC システムが導入されたA340-600旅客機を使ってブエノスアイレスでの環境サミットへ出席したました。気候変動を理解することは人類の課題です。我等の大気、その化学、物理、組成の理解は、科学的/技術的な挑戦と言えます。
下の図はフランクフルトからブエノスアイレスへのフライト中に測定した、「空気がどこから運ばれてきたか」を示した興味深い図です。ヨーロッパを離れると、CARIBIC 旅客機は太平洋から5日かからずに輸送されてきた空気と「遭遇する」ことができます。スペイン上空で低気圧により空気は複雑な混合をしていることもわかります。旅客機の航路にあたる高度11kmの空気は通常非常にきれいなのですが、場合によっては陸地から放出された物質により汚染されていることもあります。これは大気が陸地の表面を通過すると、汚染物質が取り込まれますが、この時強い対流が起こると、地表面の空気は約 11km の旅客機の高度まで持ち上げられることがあるためです。この図では熱帯地域の大気は安定しており、緑線のように海面から5日かかって輸送されてきた空気もあります。このような空気は通常、太陽光により浄化されおり非常にきれいになっています。強力な自然の力によって空気は徐々にきれいにされていくため、このプロセスを詳細に理解しなければなりません。しかし、広範囲にわたる森林火災などは非常に多くの汚染物質を地球大気に放出します。このフライトではブエノスアイレスに到達する直前に、西からのジェット気流に遭遇しました(12月なので、ブエノスアイレスは夏です)。濃い赤線は上層大気である成層圏から来た空気です。このようなフライトを通じて、CARIBIC の研究者は膨大な大気データを得ることができます。さらに多くの情報をこのホームページ(www.caribic-atmospheric.com)で見つけることができます。
Translation: Shungo KATO
Faculty of Urban Environmental Sciences, Tokyo Metropolitan University
Minami-osawa 1-1, Hachioji-shi, Tokyo 192-0397, JAPAN